2013年03月03日

キャンバスで、作品の出来映えが違う


キャンバス布は、画材の中で最も時代の変化に晒された製品です。
絵の具や筆は、製造技術に変化は有るにしても、
製品の表向きは、今も昔も殆ど変わらないものが販売されています。

ところが、キャンバス布だけは大きく変わりました。
30年ほど前までは、キャンバス布は殆ど手塗りで作られ
小売店では、ロールで仕入れ、店頭で手張りしていました。
初心者からプロの絵描きさんまで、
みなさん膠をベースとした高品質の画布を使っていたわけです。

1970年代の初頭でしょうか、絵画材料の需要の高まりと共に
機械塗り・機械張りの、いわゆる張りキャンバスという製品が出現しました。
このキャンバスは、アクリル塗料をベースとしており、布の素材も
綿や化繊、麻布やそれらの混紡と、様々です。
大量生産が効き、価格競争が出来るので、今ではこちらの製品が需要の90%を
超えています。

canvas.jpg

安くて安定供給が得られて良いことばかりのようですが、問題もあります。
キャンバスメーカーからは、どんな下地材や上塗り材が塗布されているのか、
情報開示が全く無くなってしまったことです。
どの布(張りキャンバス)を使えば、どんな仕上がり感があるのか、
といった情報も全く有りません。

販売店は内容が分からないまま、麻布100%かどうかといった、
現在の張りキャンバスのレベルでは、問題とならないようなうたい文句で
販売競争をしました。
消費者は、選びようがないので、少しでも安いものに飛びつきます。
その結果、ティッシュペーパーの安売り合戦の様相を呈し混乱をしました。

木枠用の材木、キャンバス用の麻布、どちらもほぼ100%輸入品で価格に不安があります。
その中で、消費量の大幅な減少と値下げ競争に晒されているキャンバスメーカーの経営は、大変厳しい様子です。これは、この業界が置かれている状況を表すものでもあります。


さて、古くからキャンバスを作っているメーカーの製品に、細目のキャンバスがあります。
これを使った作品は、古くなってもとても良い油絵の色調と絵肌、雰囲気を保ちます。
キャンバス布でも描き上がりの感じが違うということがよくわかります。
油絵の具は、定着性、発色性、耐久性共に余りにも強力なため基底材が疎かにされる傾向にあります。
しかし、もう少しお使いになるキャンバスの選定にお手間をかけてください。
きっと、描くという楽しさと、作品の出来栄えが違ってきます。

最近、機械塗りと手塗り、機械張りと手張り、どちらが良いのか。
といった問題で考えることが有りますが、また別の機会にお話します。



posted by shiro at 15:46| キャンバス