2013年04月29日

ありがたいお客様!

最近、遠方からご注文においでになるお客様が増えています。
おもに額装のお客様ですが、ネットをご覧になって
評判をお聞きになって、県外からわざわざ足をお運びくださいます。

先日も都内からお越し頂き、絵皿を入れる額縁のご注文を頂きました。

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さる著名な漫画家の描かれた絵皿です。
新店舗に飾られると言うことで、
垢抜けた配色の額装をお選び頂き、
作業完成後にお送りさせて頂きました。

最近は、地方の画材店や額縁店がやめてゆくので、
お困りの方が多い様子。
また、納得のいく品物やサービスを手に入れる為には
多少の移動は厭わない、パワフルな方が増えているのかも知れません。

遠方からのご注文は、修理等で戻る可能性が少ないので
経年変化への対策なども考慮しながら、いっそう丁寧に作業しています。

おそらくこれからも、ますます増えてゆくと予想していますが、
お店を支えて下さるお客様が高齢化を迎えている中で
ほんとうに有り難い現象です。

お皿の額装はこちらでご案内しています

posted by shiro at 13:52| 額装

2013年04月28日

キャンバス張り、4月は鬼門!

「購入したキャンバスがたるんだ」
というクレームが多いのは、3〜5月です。
なぜなら、この月は毎日の湿度の変動が激しいからです。
特に4月は最悪! 晴れた日は1日の平均値が30%台、
ひとたび雨になると90%台まで上がります。

麻布は、急激に水分を含むと縮み
徐々に含むと伸びると言う性質を持っています。

日常乾いている店内で張ったキャンバスを
風呂や洗濯、炊事など、生活の湿気が有る
お客様の家庭にお持ちになるわけですから
輪を掛けた湿度の変化が起こります。

家の周りに林がある、庭に緑が沢山ある
そばを川が流れている、芝生の公園がある
などというお宅はさらに湿度の影響を受け
たるみが激しくなります。

たるみが出たキャンバスをお引き取りして
店に置いておくと、すっかり元の
ぴんと張った状態に戻ってしまう場合がほとんどです。

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昔のお客様は、湿気でキャンバスがたるむことをご存じだったので、
キャンバスプライヤーをお持ちになって
引っ張り直して使ってくださったので、
クレームがほとんどありませんでした。

しかし昨今のお客様は、メーカーで機械張りしたキャンバス育ちの方が多く
手張りのキャンバスは、湿度でたるんでシワが出る事を
ご存じ有りません。
いきおい、「お宅で買ったキャンバスはたるむ」
といったクレームに繋がります。

機械張りキャンバスは、はじめから強く張られていません。
機械では手張りほどのテンションが掛けられないからです。
また、平均に引かれているので、シワが目立ちません。
そこで、湿度でたるんではいるのですが、
手張りキャンバスほどの変化を感じないのです。

手張りでしっかり張られたキャンバスは、
気持ちよく描くための絶対条件です。
お客様には、いつでも気持ちよく描いて頂きたいと思います。

そこで対策として、湿度の低い日が続いた時には
キャンバスに湿度を与えてから張ることにしました。
といっても裏側から水分の与えすぎは禁物です。
極細かい霧を平均に掛けるために思いついたのが
額装の作業に使っている、塗装用のエアーガンでした。

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これを使い高圧で水を吹くと、
実に細かい霧を、広い範囲に平均に吹くことが出来ます。
吹いたあとを触っても、水分を感じないほど微量に与えられ
そのあとは、きっちり張り上げる事が出来ます。

この方法が良いか悪いかは、論が割れるところですが
今の時代のクレーム対処法としては効果が有ると思います。

しかし、キャンバスは生き物です。
麻布の出来、織り方、表面の塗料との関係など
不安定な要素が沢山あり、絶対の解決法は無いのです。

麻布を使ったキャンバスは、たるむもの。
と言う認識をぜひお持ち頂き、
ゆるんだら自分で引っ張る、をお願いしたいものです。

使いやすいキャンバスプライヤーはこちらです

posted by shiro at 15:41| キャンバス

2013年04月22日

刺激を受けています!


西麻布のMario i Sentieri
TVで活躍中のマリオのお店に
お客様からのオファーで、作品の取り付けに伺っています。

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真っ黒な内装、シルバーの厨房や食器類、雰囲気のある照明
イタリア人のセンス溢れる高級感たっぷりなお店です。

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店内に掛ける額縁のご注文を頂いた時には
お店の空気をいっぱい吸い込んで、
歳と共に動きの鈍った脳の隅々まで
その場の緊張感を詰め込んで帰ります。

店に戻り、お客様の水彩画や油絵に囲まれた業務に戻ると
額装のイメージが狂ってしまうからです。

マリオのお店の仕事を頂くと、
額装というのは、単に作品に合わせるだけでなく
インテリアに合わせることが大切!
と言う当たり前のことを再確認させられます。
また、さまざまなインテリア感覚にマッチするフレームを
チェックする必要性を感じさせられます。
そういった意味で、とても刺激的な仕事で大切にしています。

ところでお料理もとても美味しいそうです。
まだ一度もチャンスがないので、何かの記念日にでも・・・。
夜はセレブが集まる場所のようなので、私の場合まずはランチから。

食通の方は、ぜひ訪ねてご覧になっては如何でしょうか。

http://mario-frittoli.com/


posted by shiro at 19:23| 額装

2013年03月22日

二つ折りキャンバス、折るのは運ぶ時だけ!


小さくなって便利な二つ折りキャンバスですが
折るのは、運ぶ時だけにしましょう。


昨年、初夏の展覧会が終わった時に
来年の製作用にと
二つ折りキャンバスのご用意をして下さったお客様がいらっしゃいました。

今年の初め、「キャンバスが開かない」との電話!
二つに折ったまま半年以上置いておかれた様子です。

見せて頂くと、折り目の釘無しの部分が縮んで開くことが出来ない状態に。

その後、同じ症状のお客様がもう一方出られたので
「使い方のご注意ラベル」をお作りして、木枠に貼らせて頂く事にしました。

二つ折りキャンバスを折ったままにして保管するのは、厳禁です。


posted by shiro at 15:51| キャンバス

2013年03月15日

「国産の水彩紙が無くなる!」かもしれない話

水彩紙のメーカーが、頭をかかえています。
水彩紙を作れる機械が、少なくなっているからです。

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水彩紙の場合、メーカーと言っても、
紙を自社で漉いているわけではなく
大手の製紙会社に製造委託しています。

最近、その製紙会社が、効率の良い新しい機械に入れ替えて、
水彩紙が作れなくなる、といった状況が出始めています。
新しい機械は高速で、
コピー用紙や印刷用紙の様な短繊維の紙は短時間に大量に作れますが、
水彩用紙のように長繊維の厚い紙の製造は無理なのだそうです。

国内の製紙会社は合理化の為、競争で機械を入れ替えています。
そして、放出された遅い機械は、中国や韓国などに売却されています。
国内で作れなくなると、そちらから買うと言ったことになりそうです。
技術も流出してしまい、製品管理や開発もやりにくくなるでしょう。

国内で作る製紙会社が現れるとしたら、
特種な製品として高価なものに成ってゆく。
中国や韓国製とは価格で勝てない 
= 無くなって行く。と言った道を辿るのでしょう。
ケント紙や画用紙も同様な状況で、
もともと需要が少ない美術用紙全般が同じ運命となりそうです。

効率を求める世の中になると、
美術のように時間が掛かって結果がすぐに出ないものは
時流から外れてゆくのですね。



posted by shiro at 19:30| 水彩画

2013年03月09日

最近、とても神経を使った仕事!

4週間掛かった作業が終わり、無事納品を済ませました。
須田剋太作、犬養道子「日本人の記録 犬養木堂」の挿絵
約250枚を額装する仕事です。

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須田さんは隣の旧吹上町出身で、旧制熊谷中学出身の著名な画家です。
私どもの店の向かいに有った酒屋の女将さんが実の姉さんだったり
同年代だった父とも面識があったりと、ご縁のある方でした。
私も何度かお会いしたことがあって、
ジーンズのツナギとおかっぱ頭、天真爛漫な風貌が魅力的な方でした。

額装させて頂いたのは、毎日新聞に1年間連載された作品の挿絵で、
コラージュが多く、自由奔放な作風で、
人物の頭や足が画面からはみ出していたりします。

一枚ずつ作品を確かめながら、
マットで覆っても良い部分、はみ出した部位を尊重しなければいけない作品と、
考えながらの作業です。当然、全てのマットサイズが異なる結果となりました。

奔放で力強い画風でありながら、貼り合わせた紙の透け具合で下の絵柄を表現したり
マスキングの後、スパッタリングをしてある部分がとても綺麗だったり
岩絵の具を使った下塗りの綺麗さなど、
非常に繊細な感覚をお持ちの方だったようにうかがわれます。

ある作風が暫く続くと、次には異なった作風になったりと移り変わっていき
何枚かをまとめながら描かれたものかと思いながら、興味深く作業をさせて頂きました。
この様な仕事は神経を使いますが、とても楽しくて疲れ知らずで作業が進みます。

こちらの原画展は、平成25年4月1日(月)〜14日(日)の期間、
鴻巣市市民活動センター 会議室 A・B(エルミこうのすアネックス3階)
で開催されます。
司馬遼太郎の「かいどうを行く」の原画に繋がってゆく作品展で
日本史としてご覧になっても興味深い作品です。
お近くの方は、ぜひ足をお運び下さい。




posted by shiro at 16:27| 額装

2013年03月03日

驚き! キャンバスは熱で伸びる


長年扱ってきたキャンバスですが、最近なるほどと感じたことがありました。
それは、「今のキャンバスは、温度でも伸びる」ということです。

5月の連休のある日、100Fキャンバスのご注文を頂きました。
指で弾くとパンパンと心地よい音がするように張って
配達をする予定で車に載せて置いたのですが
翌日配達先で車から降ろそうとすると、タルタルのシワだらけ。
あまりの変わりようにビックリ。
当時キャンバスのたるみについてのクレームが増えていたこともあって
理由を確かめる必要がありました。

こんな場合初めに疑うのは、湿度の変化。
キャンバスに使われている麻布は、多量の水分を一気に含むと縮み
微量の湿気をじわじわと含むと伸びるという性質を持っています。
キャンバスの裏から何かが当たって膨らんだ部分に
裏から霧を吹くと、ピンと張って即座に治り
乾燥した冬場に張ったキャンバスが、湿度が上がる春先にたるんでしまう。
これはそんな理由からです。

店内は、水場もなく乾燥しています。
そこに在庫していたキャンバス布は乾き、張ったキャンバスも乾燥状態で縮んでいます。
ところが露天に駐車している車中の湿度は外気と同じです。
この時期は天候の変化が激しいので、
夜間、徐々に湿気を含んだキャンバスが伸びてしまったことは十分考えられます。

しかし今回のたるみ方は、それだけでは説明がつかない程ひどいものでした。
そこで、次に考えたのはキャンバス布の質です。

私共の店では、キャンバスに拘わりを持っています。
絵の具の乗りが良く気持ちよく描けるということは
基底材としての絶対条件だと思うからです。 描画の進み、完成に大きく影響します。
また、年月を経た作品の額装を受る機会が多いのですが、
良い基底材を使った作品とそうでないものとは、はっきり違いが感じられます。
「キャンバスなんてなんでもいいんだよ」「楽しめればいいのだから、とにかく安いものでいいんだよ」
といった風潮が一般的になってきていますが、油絵の作品は永く残ります。
残った作品が喜んでもらえる状態でないのは残念です。
お客様に気持ちよく描いていただきたいですし、また描いた方の証が残るものですから、
キャンバスの質に関して非常に注意をしています。

とはいえ、今の時代ですから販売価格にも気を使います。
大きなキャンバスは展覧会出品用に使われるものですから
長期間の描画に耐えられ、気持ちよく絵の具が載って行くものでなければなりません。
そこで、製品の質と価格のバランスを見て、これなら使えるというものを探し
ある程度の本数を仕入れ、ストックを心がけています。
今回のキャンバスもそんな製品でした。

少し品質が変わったな、と感じていた矢先でした。
キャンバス布とは50年近くの付き合いなので、触った感触で品質の違いを感じます。
また、キャンバスロールの耳の形から、
製法が機械塗りから手塗りへと変わったことは気付いていました。
そこでメーカーに問い合わせたところ
確かに製法を変えたけれど、それによる不良は無いという返事。
メーカーで実際に張って見たけれど、たるまないという報告です。
しかし検査の段階では、張ったキャンバスを条件の違う場所に移動してはいない様子。
私共でも、店内に置いておく限りたるみません。

結果として、原因が分からないまま終わってしまったのですが
キャンバスは単純ながら微妙な製品です。
まず、キャンバスの元反の麻布、今は国産率0%
すべて外国産に成ってしまい、糸の選定や織り方等の製品管理が困難な様子。
そして上に塗る白い塗料と下地の糊材と塗布技術の変化。

製品の出荷量の激減と価格競争にさらされて、安い原材料を使い、
簡略化出来るところはしていると想像できますが
メーカーはそういった問題は公表しません。
現在は、私共からのクレームにより元の製法の製品に戻っていますが
私共には想像が付かないような事象の複合作用で、
伸びの激しいキャンバス布が出来てしまったようです。

後日この話を他のキャンバスメーカーと話していたところ、
もうひとつの問題が出てきました。
それは、熱によるタルミでした。
昔の製品は、白い塗料の下地は膠でした。
白い塗料が麻布に際限なくしみこむのを止めると共に、
キャンバスのコシを作る役目も持っています。
しかし最近では手間のかかる膠を使わずに、ポパールなどの水性樹脂糊を使っていて
この樹脂糊は熱で伸びます。
メーカーでは、夏場には車の中に張りキャンバスを放置できないといいます。
「キャンバスの伸びの原因は湿気」と思い込んでいた私としては驚きでしたが、
理屈で考えると納得です。

キャンバスは色々な条件が重なってたるみます。
特に温度、湿度ともに変化の激しい初夏はWパンチ。
ご利用の皆様も、この時期に、しわやたるみが出たら
こんなことも有ると思い出してください。

たるんでしまったキャンバスは張り直すしか方法はありません。
一度張り直したあとは伸びが少ないようです。
キャンバスのタルミと皺に関しては、機械張りと手張りの問題も大きく関わってきます。
その話は次の機会に・・・。

posted by shiro at 17:13| キャンバス

ここまでやるか! キャンバス木枠


スグレモノを見つけましたので、お知らせ!
それは、60Sの折りたたみ木枠です。

このサイズの折りたたみは、私も初めてなので仕入れてみてビックリ!
とにかく良くできています。

kiwaku_futatuori_60s.jpg

この木枠、どこから折れるかわかりますか?
ここまで作り込んであれば、画面がシネマスコープになりません。
日本の技術ですね?、欧米の画材店が見たらびっくりするのでは・・・。
100Fもこれならと思うのですが
価格、重量ともにヘビーになるでしょうね!

posted by shiro at 17:10| キャンバス

大きなキャンバスは、 二つに折れば車に入ります


100号などの大きなキャンバスは、専用の木枠と金具を使えば
二つに折って持ち運ぶ事が出来ます


絵画教室や研究会にもって行く時に便利なすぐれもの
二つ折り専用の木枠と金具、クリップです。

futatuori_open.jpg

100号の場合、折ったキャンバスは サイズが1,303×820mm
となるので、うしろが開く車だったら簡単に入り楽ちん!
最近注目され、よく使われる様になりました。
桟の数が多いので若干重いのですが
繰り返しの使用を考えると、仕方がないかな・・・。

futatuori.jpg

このキャンバスを張るのにはコツが要ります。
長手桟が無いため短辺が湾曲しやすいのです。
また、折ったり広げたりするのがやりやすく、なおかつ
たるみの出ない程度のテンションを掛けなければなりませんので、
経験が必要となります。

kanagu.jpg

二つ折り金具はHOLBEINとユトリロの2社から出ていますが
どちらも今ひとつと言ったところ。
どちらかと言えば ユトリロ製の方が、いくらかしっかりしています。
生産量が極端に少ないので、改良はなかなか難しい様子です。

二つに折ってから止めるクリップの安価版をユトリロが発売していましたが、
生産をやめてしまいました。
工場のご主人に伺ったところ
二つ折り金具はキャンバスの枚数分出るけれど
クリップは使い回しをする方が多く、さばけないそうです。
新しく生産すると、1ロットがとても消化できない程大量になってしまうとか。
そのような訳で、市場から製品が無くなってしまいました。
現在は HOLBEIN から発売されている大型のクリップのみ。

clip.jpg

急に需要が移ったせいか、メーカーも在庫が無くなり
新しく生産に入った製品は、かなり値上がりしました。

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大きなキャンバスを運ぶのにお困りの方は検討してご覧になると良いですよ!
初めは出費になりますが、かなりの回数使い回しが出来るので、価値はあると思います。

このキャンバスは、展覧会に出すときには通常の木枠に張り替えましょう。
裏の部品が飛び出しているので、他の作品に傷を付ける可能性があります。
また、ねじがゆるんでパーツを失ってしまうと、手に入れにくいのです。

30号から120号まで出来ます。
当店ではフナオカのリーズナブルな油性キャンバスを張って
100号で ¥35,810で販売しています。
クリップは¥5,250で別売りとなります。

近場でしたらどちらへでも配達を致します。
また、遠方へは荷造りをして発送をさせて頂きます。(荷造り運賃無料)
他のサイズやアクリル用キャンバスを張る場合は、別途お見積もり致します。
 
※追記 その後、ユトリロ製の二つ折り金具は生産が終了され、
現在はHOLBEINの製品だけとなりました。

shopmaster@arsgabou.com  迄お問い合わせ下さい。

※その後のご報告 2013年3月
ユトリロの金型を引き取って製造を始めようとする会社が現れた様子です。
そちらへ移ると、たぶん値上がりします。
posted by shiro at 17:05| キャンバス

キャンバスで、作品の出来映えが違う


キャンバス布は、画材の中で最も時代の変化に晒された製品です。
絵の具や筆は、製造技術に変化は有るにしても、
製品の表向きは、今も昔も殆ど変わらないものが販売されています。

ところが、キャンバス布だけは大きく変わりました。
30年ほど前までは、キャンバス布は殆ど手塗りで作られ
小売店では、ロールで仕入れ、店頭で手張りしていました。
初心者からプロの絵描きさんまで、
みなさん膠をベースとした高品質の画布を使っていたわけです。

1970年代の初頭でしょうか、絵画材料の需要の高まりと共に
機械塗り・機械張りの、いわゆる張りキャンバスという製品が出現しました。
このキャンバスは、アクリル塗料をベースとしており、布の素材も
綿や化繊、麻布やそれらの混紡と、様々です。
大量生産が効き、価格競争が出来るので、今ではこちらの製品が需要の90%を
超えています。

canvas.jpg

安くて安定供給が得られて良いことばかりのようですが、問題もあります。
キャンバスメーカーからは、どんな下地材や上塗り材が塗布されているのか、
情報開示が全く無くなってしまったことです。
どの布(張りキャンバス)を使えば、どんな仕上がり感があるのか、
といった情報も全く有りません。

販売店は内容が分からないまま、麻布100%かどうかといった、
現在の張りキャンバスのレベルでは、問題とならないようなうたい文句で
販売競争をしました。
消費者は、選びようがないので、少しでも安いものに飛びつきます。
その結果、ティッシュペーパーの安売り合戦の様相を呈し混乱をしました。

木枠用の材木、キャンバス用の麻布、どちらもほぼ100%輸入品で価格に不安があります。
その中で、消費量の大幅な減少と値下げ競争に晒されているキャンバスメーカーの経営は、大変厳しい様子です。これは、この業界が置かれている状況を表すものでもあります。


さて、古くからキャンバスを作っているメーカーの製品に、細目のキャンバスがあります。
これを使った作品は、古くなってもとても良い油絵の色調と絵肌、雰囲気を保ちます。
キャンバス布でも描き上がりの感じが違うということがよくわかります。
油絵の具は、定着性、発色性、耐久性共に余りにも強力なため基底材が疎かにされる傾向にあります。
しかし、もう少しお使いになるキャンバスの選定にお手間をかけてください。
きっと、描くという楽しさと、作品の出来栄えが違ってきます。

最近、機械塗りと手塗り、機械張りと手張り、どちらが良いのか。
といった問題で考えることが有りますが、また別の機会にお話します。



posted by shiro at 15:46| キャンバス